みなとみらい特許事務所 所長・弁理士 辻田 朋子 氏
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ITを活用したサービスの強み
数の力でサービスの質を高める
白坂CEO(以下、白坂):本日は宜しくお願いします。オンラインで独自の商標検索や出願の依頼ができる、ToreruやCotoboxなど、AIを使った商標システムも今では色々と出てきていますが、オンラインで商標依頼を受け付けるという意味では先生のところが先駆け的な存在だったのかと思います。開始当初はやっぱり周りから何か言われましたか?
辻田先生(以下、辻田):多少はありましたね。ITが問題というよりは価格設定の問題だと思っていて、お客様にご指示いただけたのも費用的にリーズナブルだったからという、そこに尽きると思うんですね。中小企業さんにとって費用ってすごく重要な問題で、ITかAIかは置いておいて、とにかく「いいものを安く手に入れたい」というのが共通する心理で。その点では、同業界から「価格競争を引き起こす可能性がある」との目で見られるというのは、少なからずあったとは思います。
白坂:料理で例えるなら、”高いフレンチを出したけど、安いおにぎりとかラーメンがあって「安い方に流れる」ってフレンチのシェフが怒っている”みたいな状況に似てませんか?”そうは言うけど、そもそも値段にあうサービスを提供できてないんじゃない?”っていう疑問はありますよね。
辻田:安くてもきちっと社内の情報の処理の仕方とかITを活用すれば、今いったフレンチと同じような質のものが提供できると思ってるんですね。数の力で。少しの案件を一生懸命分析するよりも、たくさんの案件を分析して情報集約すれば、それ以降は少ない工数でできると思うんです。安かろう悪かろうではないところでちゃんと価格を見極めてきたつもりですし、正直いうといまお客様からも同業他社からも「内容もいいよね」と。侵害対応とかその辺のアドバイスとかも含めて、どんなに小さいお客さんでも一社一社アフターフォローをやっているところがあるので、そういう意味ではサービス内容として独自のポリシーを持ってやっています。
スタートアップや中小企業の
知財戦略はどうあるべきか?
必ずしも調査に費用をかければいいとは限らない。
裁判外解決に全力をそそぐというやり方
辻田:うちも特許調査は必ずやっているんですね。大企業だと、例えば特許調査に12万~20万くらいかける場合も多いですが、大企業の視点ではリスク回避とかコンプライアンス順守の重きが大きくなるので、「もれがなく」っていうことが非常に重要視されるんです。一方で、私が中小企業やスタートアップを見ていて思うのは、理想を言えば、ちゃんとクリアランスして、自分の技術の周りにある特許の状況を把握して戦略を立てて、ってなるんでしょうけれども、そこにすごい資本投下しすぎると・・・
白坂:負担が多すぎますよね。
辻田:まず開発を進めて市場の反応を見て、ということをスピード感を持って進めないといけない時に、そこにお金を使いすぎるのはよくないと思っていて。もう大体把握しているんですよ。本当の競合というか、同じようなサービスを提供しているようなところとか。だから私がいつもスタートアップの方が悩んでいる時にいうのが、「そこだけ把握してクリアにすれば、仮にちょっと規模感のある企業の特許を踏んでいたりしても、交渉とかでなんとかなるので、なんとかしましょう」と。だから「簡易調査だけでいいと思いますよ。だからそれだけしましょう」、みたいな。