白坂:特許権がこれで、製品がこれで、先使用権の主張がこれで、みたいな。

高橋:非常に面白いですね。訴訟・紛争に備えた知財戦略でいうと、AI Samuraiは主引例・副引例の検索機能を備えているので、やっぱり訴訟実務を考えた時に非常に魅力的ですよね。すなわち、AI Samuraiは裁判実務で定着している進歩性の判断プロセスをAI化している点で、魅力的です。①主引例から主引用発明を認定する、②本願発明と主引用発明の一致点相違点を認定する、③副引例から副引用発明を認定し、当該相違点にかかる構成が副引例に記載があるかも含め、容易相当性を認定する、この各過程が、そのままシステムに反映されてるのってAI Samuraiしかないんですよね。だから結局、実務でも非常に大切な点である、「相違点が埋まるか否かの判断」をAI化した点が大きな特徴だと思います。

白坂:そうなんです。特に弁護士の先生の業務では主引例が決まっていることも多いじゃないですか。なのでAI Samuraiも機能として主引例を指定できるようになっています。主引例をロックして、構成要件にキーワードを入れると副引例についても該当する文献を見つけにいくような機能が追加されました。

高橋:それ、めちゃくちゃ使いやすいですね。いままさにそういう仕事してます(笑)。この相違点を埋める副引例が欲しい!!って。
出願と紛争の大きな違いは、出願は「特許にしたい」っていう人たちなんですけど、紛争って「これを無効に追い込みたい」っていうところで使うじゃないですか。でもそういう機能が今までなかったんですよね。だから紛争に対応した検索というのは人の頭でしかできなかった。それができるようになったのがAI Samuraiですね。「主引例の固定」も、僕たちが普段頭で「こうしたらどうなるだろうか」っていうパターンでやってるんですよね。

白坂:それを人が読まなくてもAIが数値化して一気に出すので、それがけっこう使えると思います。

高橋:実践でいうと主引例や副引例を固定したり、相違点を埋めたい、とかいうのはかなりもうスロット感覚でできちゃう。これは紛争解決の手段として使えると思います。

白坂:逆にいうとこう一回負けそうだったけど、無効によって勝ちになったみたいなケースもけっこうあるのかなと思うのですが。

高橋:そうなんですよ。充足論は、特許発明と対象製品の対比の問題ですので、後から事実問題が変更され一発逆転ということは、ほとんどないです。ところが、無効論というのは、有望な先行技術文献さえ見つけてくれば途中から一発逆転でひっくり返るというのが十分ある。だから「この相違点が埋まらなくて一審で負けた。じゃあ控訴審どうする?」となった時にそこだけを集中的にリソースを割き(人力勝負)、逆転を狙う訳です。でも裁判は局面においては時間勝負なんですね。だからその「ここが埋まらない、ここさえあれば勝てる」、という状態でさらに時間勝負。これはまさにAI Samuraiの出番じゃないですかね。

:なるほどでござる。はっきり勝ち負けの決着がつく訴訟の実務に当たっている弁護士ならではの視点でござるね。熟練した先生方であっても、無効論については意外と人力の時間勝負、というのは弁理士業務に通じる指摘でござる。

リソース格差の解消・フェアな競争基盤の実現に期待

白坂:しかも自動翻訳に対応しているので。すでに英語(米国特許)は搭載されていて、もうすぐ中国語も出るんですよ。今後中国特許が増えてくるので。

高橋:いいですね。色んな訴訟をやっていると、世界のどこかに何かしら文献があるんじゃないかと思ってしまうんですよね。だから結局、人力勝負なんですよ。特許庁が出した統計が出ていましたけど、中小企業より大企業の方が訴訟が強いのはなぜかというと、そういう副引例を探す場面で、人海戦術とお金でもう世界中の文献をわーっと探すんですよ。それって中小企業にはできない。知財の一番の問題かもしれないですけど、大企業と中小企業の情報格差だったりそうしたリソースの格差というのが一気に埋まるんじゃないかと。今まで「資金力があるところだけが出願できて、資金力があるところだけが訴訟に勝つ」みたいな流れがあったけれど、誰かだけのシステムじゃないですもんね。そういう意味でも、構図が変わってくるんじゃないですかね。AI Samuraiは大企業と中小ベンチャーの情報格差を埋め、フェアな競争基盤というものを実現できるんじゃないかと期待してます。

白坂:そうですね。これからも中小企業とかベンチャーを伸ばしていかないといけないと思います。

高橋:本当にそう思いますよ。大企業はもちろん一つの武器として使うわけだし。だから今までは人の手に依存していた仕事が最小化されることによってそういうところでコストが抑えられて、もしかしたら紛争とかもしやすくなるかもしれない。結局、紛争かするか否かはコストリターンの関係で決まりますから。出願の話と同じで、ソフトを使うことで人力のコストは安くなるので、結果、件数は増えると。権利行使にしても、やっぱり今まで我慢してる人が多いですよね。「なんか侵害されてるけどそこまでお金かかるならちょっとできないよね」っていう。そういう感覚が低くなるのはすごく良いことですよね。

AIは弁護士業務に向いているか?

「この範囲は調査し尽くした」と言える強み。
大逆転を可能にする紛争案件における無効資料調査

白坂:高橋先生は弁理士であり弁護士でいらっしゃいますが、やはり弁護士が紛争案件で行う無効資料調査は責任は重いですか?

高橋:そうですね・・・。もちろん全力でやるんですけれど、侵害、非侵害の白黒結果がつくので。弁理士をやっていた時には、明細書を作成したとか拒絶理由に対し意見書を作成したとかいうところが大きくて、結果として勝敗は出てきますけど、企業の命運を左右するような勝ち負けというのはあまりなかったんですよね。それが弁護士になって、「勝訴」「敗訴」となると、今度は差し止め判決が出るか出ないかという話になるので、工場が閉鎖される。大企業の場合で言えば事業部4000人の仕事がなくなる。こういう話になるんですよね。だから負けた時のインパクトというのは弁理士時代の特許査定拒絶査定の時と比じゃないと思います。

白坂:経済的インパクトが凄すぎますよね。

高橋:億単位の判決が出るので。損害賠償もそうですし。差し止め判決というのは「事業がそのままなくなる」という意味ですから。なかなかこれは。責任の重さというものを弁護士になってから非常に感じるようになりました。

白坂:やっぱりチームのサポートで入っている時の負けと、ご自身がメインで担当している時の負けでは、感覚的には変わってくるものですか?

高橋:ありますねそれは。チームでやっている時の負けもショックですけど、個人で戦うということも弁護士はあるので。書類は誰か一人が柱になって書くので、自分が主任でやっている訴訟というのはものすごく責任感、重圧を感じたりしますね。それは訴訟を何年やっても、今でもそうですね。だからそういう時に「この範囲だけは調査し尽くしました」みたいに、AIの機能でサポートしてくれるような力があるのは、非常に心強い。やっぱり重いですからね。責任ある仕事をやっていると思うので。そういう時に「この範囲は調査し尽くしたんだ」と言えるような、そういうシステムがあるというのは非常に心強いですね。

白坂: AIはすごく便利だけどその責任は追えないから、あくまで武器として使うべきですよね。弁護士の先生のその責任の重さは凄まじいですね。

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