松本:調査業務におけるもう一つの課題は、キーワードの設定と検索式の組み立てにかなりのスキルが要求されることですかね。やはり熟練した弁理士ほど、その辺のセンスが違います。特許文献を対象とする先行技術調査を調査会社に依頼することもあるんですが、調査主題に合わせたキーワードの設定とIPC分類を駆使して高度な検索式を組み立てる能力は、熟練したサーチャーならではだなあと感心します。

白坂:すごく分かります。弁理士の中に蓄積されたナレッジというか勘どころってやっぱりあって。そういう暗黙知のような部分もAI Samuraiに学習させたいという思いはずっとありますし、もちろんラーニングサーチ機能もそうですけれども、常に試行錯誤してAI Samuraiの機能に取り入れているところですね。

松本:AI Samuraiのユーザーインターフェースでは発明内容をクレームの記載形式で入力しても、要約した文章で入力しても検索できるようになっているじゃないですか。つまりキーワードの設定と検索式の組み立て作業から解放されるんですよね。その点でも非常に助かっています。抽出された文献のマッチワードを参考にして入力した発明内容を再編集・再調査することで精度が上がる場合もあります。これってサーチャーが検索式を微調整して再調査するのとちょうど同じ手順をAI Samuraiのソフト上で踏んでいることになりますよね。ここの精度が上がっていくことで、より調査業務における課題というのは改善に向かっていくんだろうと思います。

:通常の調査業務において「キーワードの設定と検索式の組み立てにかなりのスキルが要求される」としたうえで、拙者AI Samuraiを使うことで、「キーワードの設定と検索式の組み立て作業から解放される」と語って下さる松本先生。拙者の良いところを褒めて頂き、なんだか照れるでござる。最後に松本先生への最後の質問。これから拙者を活用してもらうことで、どんな世界が拓けると思うでござるか?

発明創出における課題とAIによる解決の可能性

白坂:AIを使って発明創出が今後増えてくるとしたら、どんな世界観が訪れると思いますか?

松本:難しいですね。AIが発明創出の支援を担ってくれるとしたら、「課題発見能力」のようなところに寄与する部分が大きいのではないでしょうか。「問題点や課題に気づく能力」と言いますか。

人が発明創出をするプロセスというと、一般的には最初に既存の技術にある問題点もしくは課題に気づくステップがありますよね。それから過去の自らの経験や他人の成功例・失敗例から学んだことに加えてその人固有のある種のひらめきがあって、最終的にその問題点や課題に対する解決手段を見いだしていく。その人が見いだした解決手段の妥当性というのは、場合によっては実験やシミュレーションをもとにしたデータの裏付けを必要とするかもしれません。

人を「問題点や課題に気づく能力」に優れた人と、そうでない人の2つに分類できると仮定します。発明を創出する可能性という点においては、後者よりも前者の方がより多くのチャンスを得ることになりますよね。

逆に言うと、もし後者に対して「問題点や課題に気づく能力」を支援する仕組みを提供できれば、全体としてより多くの発明が生まれるかもしれません。ひょっとすると将来、AIが同僚や先輩、上司の代わりに新たな発明につながるアドバイスを与えてくれるようになるかもしれません

:「問題点や課題に気づく能力」が、発明を創出する可能性をより広げるのではないかと提言される松本先生だからこそ、きっと、日本そして米国に留まることなく世界に視野を広げ、次々と新しいチャレンジを続けて行かれているのでござるね。「問題点や課題に気づく能力」は、知的財産の世界だけでなく、ビジネスの世界、そして我々が生きていくうえで常に必要な能力なのかもしれないでござるね。
松本先生、インタビューにご対応いただきありがとうでござる!

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